第2章 契約 ~後編~
「……、ぅ、ぐぅ……。」
ただ、すっかりおかしくなったアタマで何を考えていようとも、私の体は動かない。
「赦さない……!絶対に……、許さない…………!」
振り絞るようにして出てきた私の声は、ザラザラに掠れていた。
しかし、私がその声を耳にするよりも先に、私の眼の前が真っ暗になった。停電かと思ったが、どうやら違うらしい。漏れていたはずの日光が部屋から消え、僅かに点けていた室内の照明がすべて消えた。それなのに、パソコンの画面には、見たことも無い図柄が浮かんでいる。スクリーンセーバーが作動していて、ただ黒いだけの筈の画面に、紅い線で、いつか見た超常漫画に描かれていたような、魔法陣のような……。
ゾクリ、と心臓がわしづかみにされているような感覚。いや、この部屋、この空間の全てに、圧力を掛けられているような……。いや、それだけじゃ到底言い表せないような、そんな感覚。
私の視線は、パソコン画面に釘付けになった。いや、今の私に、それ以外を見ることは許されていない。
私は、呼吸することも忘れて、画面を凝視している。
部屋の中にいる筈なのに、全く別の空間に居るような気すらしてくる。というか、ここはこの世じゃないのだろう。何の根拠もないけれど、そう感じた。こんな感覚は、生まれて初めてだ。いや、きっと、普通の人は、こんな感覚を生涯味わうことなく、一生を終える。それは、断言できると思えた。