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ゆりかご 【黒執事 R18‐G】

第2章 契約 ~後編~






『――――――契約を』

 遠くから、声が聞こえた。いや、「聞こえる」等と言う表現は、あまり適切じゃない。うまく言い表せる言葉なんて見つからないけれど、「響く」という表現の方が、近いかもしれない。


『もしも、貴女がこのままで終わりたくないというのなら―――――――――』

 どこの誰とも知らない、声。上品なのに、どこか人間離れした、テノール。これほどまでに妖艶で美しい男声を、私は聞いたことがない。一度しか聞いたことが無いのに、ずっとこの声を聞いていたいような、そんな衝動に駆られるほどだ。

 でも、それより私は―――――――

「……っ、ぉ―――――終わりたく、ない……!このまま終わるぐらいなら、全部メチャクチャにして、終わらせてやる……ッ!!!」
 醜く掠れた声で、叫ぶ。

 「……。」
 声は聞こえないが、何となく、声の主がわらったような、そんな気がした。

『貴女の望みは、私が全て叶えます。しかし、その対価は、貴女の魂です。』


 何を言っているのか、全く理解できない。でも、どうせ私は、このまま死ぬ。このまま死ぬのなら、このゴミのような私の何かと、別の何かを引き換えられるのなら―――――。

『契約すれば、貴女の望みが叶ったその時に、私は貴女の魂を戴きます。そうすれば貴女の魂は、永遠に煉獄へと繋がれ―――――永遠の苦しみを味わうことになりますが―――――――、よろしいですか?』


 声の主は、相変わらず意味不明な説明を続けている。
 でも、どうせ、ここでただ無残に、何もできずに死んでいくだけだ。それならいっそ、この声の主言う『契約』とやらに縋ってみても、良いのではないか。正直なところ、これが現実なのか、私の脳が見せる妄想の一種なのか、区別はつかないけれど。それだって別に構わない。死ぬ前に、何かの夢が見られるのなら、それはきっと、幸せなことなのだから。

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