第2章 契約 ~後編~
「…………。」
私はどうすることもできず、ただ無言で『ネットワークに接続できません』という文字を眺めている。別に、ネットを使って誰かと繋がりたかったという気持ちでいたワケでもなかったし、自分から何かを発信したいと思っていたワケでも無かった。でも、世の中所詮は金だと思った。基本的人権は平等だとか、自由に発言できる権利があるとか、学生の頃に習った。でも、所詮そんなものは、嘘っぱちだ。自由も権利も、この世では金で買うものだということを、今更ながら思い知った。現に、今私には金が無い。だから、ネットで何かを発信することすらできない。口を開く、何かを発信する権利とかいうモノがあるとすれば、それは紛れもなく、金と引き換えにして入手するものだったんだね。あの教科書も、教師も、とんだ嘘吐き野郎だ。
「アハハハハ……。」
私の口から、力ない笑い声が漏れた。その瞬間に、私の体から、力がガクンと抜けた。目の前のパソコン画面が、霞んで見えた。怖い。私はこんなに怖いのに、涙も出ない。少しは込めることのできていた力が、体から抜けたのだ。あぁ、もう……。私は、私の体の終わりを感じていた。自分が、深海の底にでもいるような感覚。あの世なんていうものが本当にあるのだとしたら、私はきっと今、境界線上にいる。
あぁ、これで、少しは、ラクに……。