第11章 羽化
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「うっわ……! あんなところに、誰か座ってるよ~? きったな~い……。」
「ユミ、あんた声掛けてきなよ~!」
「冗談! あんなのに声掛けるなんて、無理! 近寄んのも嫌!」
「だよね~! アハハ~!」
「あ、動いた! ……って、こっち見てるし! 怖! 逃げよ……!」
『――――――逃がさない。』
そう。誰一人だって、逃がさない。逃がしてなるものか。私は、空腹なのだから。
「……!」
「……!?」
ニンゲンの、それも若い女の血の匂い。ひどく甘美で、おぞましい味だ。ゆっくりと咀嚼し、嚥下する。満腹になったのも束の間。数分と経たないうちに、また酷い飢餓感に襲われる。ゆっくりと立ち上がり、次の餌を求めて、歩きだす。それにしても、随分と身体が重い。それに、思考が遠い。視界が狭い。
あぁ、渇く。渇く。
ワタシは、渇く。
ワタシは、ワタシは―――――
『最終話 了』