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ゆりかご 【黒執事 R18‐G】

第11章 羽化



 頭が痛い。
 体が重い。
 まるで、体全部が鉛にでもなったみたいな、そんな重さ。なんとなくふらつきながらも、ベッドから下り、リビングへ向かう。

「おはようございます。」
 それでも、セバスチャンはいつも通り、朝食を用意してくれている。
「おはよう、セバスチャン。ありがとう。」
 お礼を言って、席に座る。
「……。」
 テーブルの上には、綺麗にカットされたトースト、付け合わせのジャム、チーズにエッグなど、色鮮やかな食材が並んでいる。
「……いただきます。」
 一口、口に運ぶ。
 ……。なんというか……。味が、あんまりしないというか……。

「どうなさいましたか? キリエお嬢様。」
 セバスチャンが、心配した様子で、尋ねてきてくれた。
「ううん。なんでもない。いつもありがとう。……ちょっと、疲れてるのかも。味覚がまだ寝惚けてるのかな。」
 言いながらも、結局私は一人前を完食した。


「セバスチャン。今まで、ありがとう。……今日で、全部オシマイにしよう。」
 私は、セバスチャンに淹れてもらった紅茶に口を付けながら、そう宣言した。
 セバスチャンは、一瞬だけ、その紅茶色の目を見開いて私を見た。
「御意。」
 けれど、それもほんの一瞬の話で、すぐにいつもみたいに返事をした。
「紅茶、味はいかがですか?」
「うん、おいしい。ありがとう。」
 嘘。本当のところ、今日は味がイマイチ分からない。でも、セバスチャンに淹れてもらった紅茶だから、きっと美味しい。

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