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ゆりかご 【黒執事 R18‐G】

第9章 拷問 ~前編~



「……っ、アンタ、何がしたいの……!?」
 美沙ちゃんが、信じられないものを見るような、異常なものを見るような目で、私を見ている。随分、反抗的な目だし、言葉遣いも、ダメの一言に尽きる。
「アンタ、じゃなくて、ご主人様、でしょ? 美沙ちゃん。それに、しっかり食べないと、体調崩すよ? 大好きな矢田夏雄にも、逢えなくなるよ? 会わせてあげる予定も、あるから!」
「……っ!?」
 美沙ちゃんは、やっぱり信じられない、というような眼差しを、私へと向けてくる。
「ううん。このお城では、私がルールなんだよ、美沙ちゃん。」
「意味が、分からない……。」
 愕然としながら、美沙ちゃんは呟いた。
「うん? そう? それより、お腹空いてるでしょ? 制限時間は、今から30分ね。 ごめんね。たくさんあるから、たくさん食べていいよ。私も、夜食食べていい?」
 私はそう言って、美沙ちゃんの前に腰を下ろして、自分は簡素なサンドイッチを食べる。
「どうしたの? 美沙ちゃんも、食べなよ。」
「ふざけないで……!」
 美沙ちゃんの眼には、今度は怒りが差した。
「どしたの? ケーキ、好きだったよね? よく、近くのコンビニへ買いに行ってたじゃない。そのケーキは、デパートの有名洋菓子店のやつだから、それよりも絶対美味しいよ! 私もお昼に食べたから、味は保証済み! さぁさ、遠慮なくどうぞ!」

 美沙ちゃんは、私を睨み付けるばかりで、結局少しも食べなかった。無為な30分が過ぎ去ってしまった。残念。仕方ないので、大きくて深めの使い捨て容器に、ミネラルウォーターを注いで、置いていく。手錠は、外してやらない。これなら、犬が水を飲むように屈めば、中に入っている水を飲めるはずだ。
「お水なら、少しの事じゃ腐らないと思うから、良かったら飲んでね。じゃあ、また明日の夜にね。ばいばい、美沙ちゃん。」

 そう言って、私は美沙ちゃんの元を後にした。

「その強情が、何日保(も)つのか、楽しみだな~」
 私は、鼻歌交じりに、自宅へと戻った。

















『第9章 了』
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