第10章 ・仮想狩場の豹変少女 その1
「いつの間に本体とソフトウェアまで買った。」
「先週のお休みの時に。勿論自分のお小遣いで買いました。」
「パズルゲームの時といいお前は隠れゲーマーという奴か。」
「そんなにやりこんでいません。」
「パズルゲームの事がある、それに関しては信じがたい。」
「あら何てこと。」
「牛島さん、文緒さんに連鎖潰されたのまだ根に持ってるんですかね。」
「俺に聞くな太一。だとしたら珍しいな。」
川西と山形がこそこそ言っている間に瀬見がとにかくだなと話を進める。
「まぁまぁの性能の奴がなんぼかあるから好きなの装備しろよ。」
「ありがとうございます。」
文緒は嬉しそうに瀬見からゲーム機を受取り早速操作を始めた。
「このアイテムを持っていってもいいですか、瀬見さん。」
「おう、近接武器は研げねぇと死ぬからな。」
「あら、この斧ゲージ長くていいですね。私まだこんなの作れてなくて。」
「素材結構めんどいからな。」
「何てこと、1人で揃えられるかな。」
「もし良かったら手伝うぞ。」
「嬉しいです。」
「あれで隠れゲーマーではないと言われても納得出来かねる。」
瀬見と話しながら慣れた手つきで操作をする義妹を見て若利は―顔は変わらないものの―大平に零(こぼ)し大平はまぁまぁとなだめる。
「文緒さんが楽しそうならいいじゃないか。」
まだ不満そうにしていた若利はここでふむと呟いた。
「確かにそれは肝心だ。」
「さて、それじゃあ文緒さんのお手並み拝見かな。」
「あの嫁が変形斧使い、嫌な予感しかしませんね。」
「そういうものか。」
「俺はそもそもお嫁さんがあのゲームやってた事自体に驚きです。」
「まだ嫁じゃない。」
「うん、若利いい加減にしような。」
言っている間に高揚した天童が叫んでいる。
「よっしゃああっ、みんな行くヨー。」
「おーっ。」
「ウッス。」
「多少の事はご勘弁いただけるとうれしいです。」
ゲーム機から狩りへ出発の効果音が流れ、文緒、天童、五色、山形はオンラインでの狩りを開始するのだった。
この時一緒に狩りをしていた野郎共が後々震え上がることになるとは誰も予想していなかった。
次章に続く