第1章 体温で溶ける恋の味
私の幼馴染み、赤葦京治は甘いものが苦手である。
それなのに、モテてしまうからバレンタインが近付くと苛々している。
これは、毎年の事だ。
子どもの頃は、何も知らずに私もチョコレートを渡していたけど。
京治が、それを苦手としている事を知ってからは何も渡さない。
だって、この日にラッピングされた箱を見るだけで眉を寄せて嫌な顔をするんだ。
しかも、私の前でだけ。
まるで、甘いの嫌いなの知ってるクセに、と言われているようで。
京治用に、毎年甘くないお菓子を作ったりしているけど、そんなんじゃ渡せない。
いくら本命で、本当に渡したいのが京治だけであっても、渡せる訳がない。
幼馴染み、とか。
いつも一緒いれるから羨ましがられるけど。
簡単には変わらない関係で。
特別な日に告白しないと、冗談だとか思われてしまいそうな、近すぎる存在で。
女の子にとって一番の特別な日が、使えないなんて辛すぎる。
渡せないと分かっているのに、毎年毎年作ってしまうのは最早癖か病気か。
モヤモヤと考えながら手を動かしていた。