第3章 絶望前のバックログ
『ねぇイズルくん。イズルくんはどこか行きたい所とかないの?。』
「ありません」
『私はね、お食事とか映画館とか遊園地とかライブとか海とか色々行きたいなー。』
「一人で行ってくればいいじゃないですか」
『一人じゃ意味ないよ、私はイズルくんと行きたいんだ。イズルくんとなら何処ででも楽しめるよ。』
「何故僕である必要があるんですか? あなたには友人がいないんですか?」
『酷いなぁ、一緒に遊ぶ友達くらいいるよ。けど私はイズルくんがいいの。』
「僕は行きたくありません」
『えー、だってイズルくんはさ、学園の外に出たことないんでしょ?。なら一緒に色んなものを見ようよ。学園にはないものが死ぬほど外にはあるんだよ。』
「僕は出てはいけないんですよ」
『少しくらい大丈夫じゃない?。』
「駄目です。僕はこの学園のトップシークレットなので先生方も簡単には行動させてくれません」
『そんなのどうにでもなるよ。イズルくんの才能を使えば先生たちなんて蹴散らして外に出られるんじゃないかな。それで私とハネムーンしようよ。』
「何がハネムーンですか。仮に脱走したとして、それに関係したあなたもただでは済まない筈ですよ。停学か退学、もしくは口封じのため消されかねません」
『イズルくんはこのままでいいの?。こんなところに学園から飼い殺しにされてるんでしょ?。もしかしたら一生ここに閉じ込められたままかもしれないんだよ。それでいいの?。』
「いいですよ、別に」
『イズルくん…………。』
「……ですが、いつかは魔が差して外へ出ようと考えるかもしれませんね」
『……………。』
「その時は、逃亡先としてあなたの家に隠れましょう。あなたは他の人間より幾らかは信頼が置けますし、もし密告しようと言うのなら脅すまでです」
『イズルくんの為なら密告なんて絶対にしないけど………私のこと信じてくれるの……?。』
「他の人間より幾らか、という程度ですよ」
『ありがと、充分嬉しいよ。』
「(……まぁ、きっと僕がこの部屋に居続ける状況も、あと数週間で終わる気がしますけどね)」
『え、今なにか言った?。』
「………いいえ、何も」