第23章 ラブコールサテライター
解斗くんや他のみんなが死んだ後だって増え続ける子供たちと新しい文明を近くで見ててあげるから。
そんな未来があるんなら、もう死んだっていいや。
どうせ助かる道なんてないんだから、身勝手で非現実的な理想を掲げてもいいじゃないか。
それに可能かどうかなんて死んでみなきゃ分からない。
分かりきった不幸な結末よりも、未知に溢れた無限の可能性に手を伸ばす方がよっほど有益だ。
だからもう、死ぬのは大丈夫。
またぶり返してきた咳に身を委ねるように、抑えることなく何度も血を吐く。
口の中がドロドロで気持ち悪かった。
喉の奥や身体中の臓器が悲鳴を上げているように痛かった。
最期を看取る人が誰も居ないことが、会いたい人が側に居ないことがとても寂しかった。
でももうこれも、あと少しで終わるんだ。
行くとこまで行ったら、気持ち悪いのも痛いのも寂しいのも感じずに済むんだ。
場合によっては大好きな彼に会いに行けるんだ。
そう思うと多少は楽な心地になれた。
『解斗、くん……解斗くん………!。』
血塗れの手を空に伸ばす。
出来ることなら生きてるうちに、最期に一目会いたかったなぁ。
また、私の名前を呼んで頭を撫でて欲しかった。
大きな手で髪の毛が崩れるのも気にせずにワシワシ撫でられるの、迷惑だったけど嫌いじゃなかったよ。
これからはもう一生そんなことしてもらえないから、結構心残りだな……。
まぁ、いいや……また、会えたらよろしくね。
衛星になって、愛を送り続けるから……少しでも、聴こえたら、私のこと、思い出してほしいな………。
……じゃあね、私の……大好きな………。
…………………。
……………………………。
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。
「どうしたの? 百田君」
「ん……いや、ちょっとな」
もうすぐコールドスリープの部屋に入るという時に、どことなく上の空な様子でいる百田を最原が心配した。
「………………」
百田は考え込むような表情で虚空を見つめると、大きく咳払いをして言った。
「心配すんな! 俺がお前のこと忘れる訳ねーだろ。なぁ、誉稀!!」
何たって俺は宇宙に轟く百田解斗だからな! と怒号を飛ばし、周りの数人から奇怪なものを見るような視線を送られる。