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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】



木兎くんたちとバーベキューをした、数週間後の金曜日。
仕事を終えた後、修一さんと会う約束を取り付けた。
場所は、駅の構内にある小さなカフェ。


もう修一さんの好きなようになんてしない。
今日はスカートも履かないし、パールのピアスも着けない。
自分の好きだったスタイルで会う。


少し緊張しつつ、てっちゃんに連絡を入れてみる。

「あ、もしもし?これから待ち合わせ場所に向かうところなんだけど…」

『俺、もういるよ』

「え?本当に?」

『そばにいるから、頑張れ』

「うん」

てっちゃんが同じ空間にいてくれる。
それだけで心強い。
覚悟を決めて、待ち合わせ場所へと足を進めた。

毎日毎日歩いているこの駅の構内。
今日家に帰る時、私はどんな気持ちでいるのだろう。




待ち合わせの店の前。
深呼吸をひとつ。
そして大きく一歩、踏み出した。

自動ドアが開いた先、長方形の狭い店内の一番奥に、てっちゃんの姿が見えた。
修一さんはその席から二席分手前に座っている。

ヒールの音がやけに響く気がする。
一歩ずつ、修一さんの元へ。
てっちゃんを視界に入れながら、修一さんが待つ席まで辿り着く。


「お待たせ」


「…ああ」


彼は無表情。
それきり何も言わない。


前はこんな沈黙が怖かった。


なのに不思議。
今日は、怖くない。


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