第6章 マイ・スイートハート ※【赤葦京治 続編】
*夢主side*
「赤葦さん…?」
「お疲れ」
思いもよらない場所に、その人は立っていた。
お互いの仕事のあと、一緒に夕食を食べようと約束をしていた私たち。
赤葦さんに会えるのを楽しみに一日仕事に集中し、やっとのことでこの時間を迎えた。
いつもなら着替えだけ済ませたその足で帰るのだけど、今日は違う。
メイク直しは念入りに。髪の毛も綺麗に結び直す。
待ち合わせは駅の中のコンビニ。
到着できそうな時間もメッセージしてある。
さあ、行こう。
ウキウキした心と軽い足取りで、職場であるビルの階段を駆け降りる。
少しでも早く待ち合わせ場所に辿り着きたいから、エレベーターを待つ時間さえ惜しい。
建物の外へ、コツンとヒールの音と共に一歩踏み出す。
そこにいたのだ。
私の大好きな、あなたが。
「え…?迎えに来てくれたんですか?」
「うん」
外は冷えるというのに、いつからこの場所で待っていてくれたんだろう?
呑気にメイク直しなんてしてる場合じゃなかった。
「ごめんなさい、お待たせしちゃって…」
近づいてきた赤葦さんが、柔らかく笑う。
「大丈夫。俺が早く会いたかっただけだから」
「え…」
「腹減ってるだろ?行こ」
当然のように私の手を握り、ゆっくりと足並みを揃えて歩いてくれる。
「…はい」
赤葦さんて意外と直球で、私が喜ぶ台詞をサラッと言ってのける。
でもきっと、狙っているわけじゃない。
ああ…ズルい人だな…。
私ばっかりドキドキしてるみたいな気がして、仕方がない。
温かいものが食べたくて、お鍋が美味しいと噂の店に入った。
赤葦さんは明日も朝が早いらしく、ゆっくり食事をしてお酒も楽しんで…という時間は、正直ない。
「なかなかゆっくりデートできなくて、ごめんね」
箸を進めながら他愛ないことを話していた私たちだけど、ふと彼の口からそんな言葉が出てくる。