第5章 glass heart【赤葦京治】
*赤葦side*
思わぬ場所、予期せぬ形での、遥との再会。
汐里が出くわした急病の女性が、まさか遥だったなんて…予想外もいいところだ。
更に驚いたのは、遥の容姿。
俺の記憶の中の彼女とは大きくかけ離れていた。
付き合っていた頃よりも、明らかに痩せ細っていたのだ。
小さな汐里に寄り掛かって歩く姿を見て、思わず手を差し伸べた。
気分が悪いというだけあって顔色は蒼白だ。
ゆっくりとタクシーに乗り込む遥を眺めながら、このまま見送っていいものかと悩む。
一人にして、もし何かあったら…。
付き添った方がいいのではないか…。
でも、汐里に対して変な誤解を生んだら…。
そこまで考えたとき、自分に嫌気が差した。
遥が急病にも関わらず、まるで保身ともとれる思考が過ってしまったことに。
ただ葛藤の理由はそれだけではなく…
俺の行動が、汐里を傷つけてしまうかもしれない。
結局、肝心な台詞を口に出来ない俺。
背中を押してくれたのは、汐里だった。
『一緒に行ってあげてください』
驚いてすぐには返答できなかった。
汐里はしっかりした子だから、この状況下でどうするべきか、ちゃんとわかっている。
誰かが付き添った方がいい、そのとおりだと思う。
何より、歩くのも辛そうな遥を放っておくことは、俺には出来ない。
汐里の後押しもあり、タクシーへと乗り込んだ。
そこで気づく。
俺たちを見送る、汐里の表情に。
彼女が、無理している時の顔だ…。
気持ちが痛烈に伝わってくる。
自意識過剰だとかそういったものじゃなく、もう確信に近い。
きっとこの気遣いは、汐里の精一杯。
俺に対しても、それから初対面である遥に対しても真摯で…
人として、女性として、本当に……
どこまでも胸を打つ。
汐里の善意は、そのまま受け止めた。
ただ、この子にはちゃんと誠意を持って気持ちを返したい。
俺自身の汐里に対する想いも、今ならハッキリとわかる。
勝手だけど、待っていて欲しい。
遥を送り届けたら、ちゃんと君に話をするから。