第3章 <クロ生誕記念SS> 神様に誓う前に
「そろそろお時間です」
部屋の扉をノックする音が響く。
俺たちは顔を見合わせ、声を揃えて返事をした。
腕に梨央の手の温もりを感じながら、チャペルへ向かう。
耳に届くのは、コツ、コツ…と靴の鳴る音。
妙に静かだ。
緊張が高まる。
木製の大きな扉の前に辿り着いた俺たち。
梨央には父親がいないから、祭壇までのバージンロードは俺と一緒に。
同じ未来に向かって、共に行こう。
これが夫婦としての、始まりの瞬間。
梨央。
これから続く長い道のり。
ずっとずっと…よろしくな。
「鉄朗さん。梨央さん。行ってらっしゃいませ」
スタッフの手によって、チャペルの扉が開かれる。
迎えてくれたのは、ステンドグラスの色鮮やかな輝き。
純白の洗練された空間。
そして、大切な人たちの温かい眼差し。
足並みを揃えて、一歩。
俺たちはその眩しい世界へと、足を踏み出した。
【 end 】