第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
「それは……"あの人"と同じだと思うから?」
「……ああ」
胸糞悪いけど、頭に浮かんだ人物は同じだったようだ。
恥ずかしそうに逸らしていた視線を、俺に真っ直ぐ戻す。
俺の脳裏に、自分本位の性欲をぶつけられ、傷ついて涙していた梨央が思い出される。
あんな男と同じレベルに成り下がりたくはない。
それに、俺の欲は今どうでもいい。
今夜ここに来たのは、梨央との時間を過ごすため。
性欲を処理してもらうためじゃねぇ。
「あいつがさせようとしたことを、今度は俺がさせるなんて…」
「あの人の時とは、気持ちが全然違う。これは、私の欲」
「……」
「てっちゃんが大好き。だから、気持ちよくなってもらいたい。私を感じて欲しい。愛情表現って言ったらおかしいのかもしれないけど…でも、私にとってはそうなの。好きだから、したいんだよ」
何で……
梨央は俺を煽る天才かよ。
ダメだって思う気持ちとは裏腹に、疼きが治まんねぇ……。
「あ……だけど、てっちゃんが嫌なら話は別で……。私…上手いワケじゃないだろうし…」
尻すぼみになっていく声は、梨央の恥じらいと自信のなさが窺えて…。
その仕草や表情にすら、今の俺は敏感に反応する。
こんな風に言ってくれてんだから甘えちまえよ、って、もう一人の俺が囁いた。
「梨央…。腹…痛くね?」
「うん…全然平気」
「じゃ…ごめん。慰めて…くれる?」
「ごめん、なんていらないよ?私がしたいんだから」
何でこんな甘やかしてくれんだよ…。
梨央は優しくそう言うと、勃ち上がった布越しのモノを手のひらで擦り始めた。
ユラユラと、ゆっくり。
それは少し物足りない、控えめな愛撫。
黙って見守っていると、梨央の手が下着の中に侵入する。
直に触れられた途端、そこはピクリと反応し、一本芯を通したように固さが増す。
梨央の手のひらと、五本の指。
温かな体温に、程よく締め付ける圧力。
梨央が、俺のために…俺を想って、触れてくれている。
体で感じる快感と、心に湧き上がる感動にも似た思い。
気を抜けば、声が漏れちまいそうになる。