第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
*黒尾side*
こんなにも梨央ちゃんを愛しいと思ったことはない。
初めてキスした車の中。
人目を気にせず、やっと二人きりになれたリビング。
逸る衝動を何とか抑えて、この部屋に入った。
柔らかな唇。
俺を誘うような黒のランジェリー。
滑らかな白い肌。
形のいい乳房。
ツンと尖った頂。
しなる腰つき。
理性を失った喘ぎ声。
涙を浮かべる目尻。
溢れ出す甘い蜜。
俺の肉棒を包み込む、淫らな舌。
指に絡み付く肉感。
鏡越しの淫らな男女。
そして。
俺の心を掴んで離さない、
魅惑的な瞳
俺を呼ぶ甘い声
熱い体温。
セックスってのは、普段潜めている淫猥な自分を曝け出す行為。
興奮を極限まで高めて、性欲を満たす。
でも、それだけじゃねぇんだって、心底思う。
梨央ちゃんのことが、可愛くて愛しくて。
この腕の中にいるのに、焦がれて焦がれて堪らない。
例えば、このままこの部屋に閉じ込めてしまいたい、とか。
四六時中、俺の目の届く所に置いておきたい、とか。
俺以外の男の姿なんて見えなくなればいい、とか。
そんな危ない独占欲が、フツフツと沸き上がる。
ほんっと、終わってる。
感情を理性で抑えることは、割と得意なはずなのに。
梨央ちゃんを前にしたら、そんな今までの自分がどこかへ行っちまう。
でも、そうなっちまう自分ももう、諦める。
理由なんて単純だ。
とてつもなく、
どうしようもなく……
「梨央……っ、好きだ……」