第9章 騎士達の凱旋
同時刻。
真綿がその異能力を振るう寸前。
織田作が、その異能力に頼らなくなる寸前。
ポートマフィア本部ビルの最上階。
その部屋の中には、殺気が爆発的に膨れ上がっていた。
「安吾を介してミミックにポートマフィアの情報を操作させ、ミミックが噛みつくようにした。
そうでなければマフィアも反撃をしないから。
特務課はそう考え、安吾に作戦を指示した。
向こうはこちらとミミック……
両方を一気に叩くつもりだった。」
マフィアとミミックは双方が犯罪組織であり、異能特務課と衝突することは避けられないことだった。
だから、厄介なミミックなる組織を、マフィアに嗾けた。
太宰の推理に、森は相変わらず笑みを浮かべているだけだ。
「政府機関は我々マフィアにとっても鬼のような存在だよ。
気軽に操れる相手じゃない」
「だからこそ、こんなにも大掛かりな仕掛けを描いたのでしょう。」
太宰が、森の手元にある、黒色の高級封筒をしめす。
「––––その封筒には、それだけの価値があったから。……ですよね?」
森の笑みが深くなった。
太宰がその封筒の中身を取り出して、机に置く。
「––––異能者組織としての活動を許可するこの証書……
"異能開業許可証"を取引材料に持ち出した。
我らポートマフィアがミミックに狙われることを良しとし、これを貰った。
そういうことですか。」
森の合理性にはつくづく嫌気が差す。
この紙切れ一枚のために、織田作と真綿が対価になったのだ。
ぎり、と歯噛みした。
滲む血の味は、もう慣れてしまって、何の味なのかも定かではない。