第47章 Re:birth …II
––––けほっ、けほっ……
小さな咳。
それが自分の研ぎ澄まされた聴覚によって拾われるたびに、彼女や小さな女の子は彼に寄り添った。
『ユキ、少し寝たらいいわ。
リンタローの相手、こんな時くらいは真綿に任せてしまって』
『そも、お二人を守るのは妾の役目さね』
彼女が笑う。
小さな女の子はクレヨンを机に寄せて、
水差しから水を注ぐと彼女へと渡す。
『……また、明日。
会えるわよね?』
『うん……また明日だね。
お休みなさいませ、エリスお嬢さま』
––––けほっ…
小さな咳が聞こえた。
だから自分は、毒の塗られた針を投擲しようとした手を止めたのだ。
ぢん!と自分の頬の横を通り抜けた弾丸が、アスファルトに突き刺さる。
「……ま、明日の朝刊はこれで飾れたであろうさ」
とん、と屋根上まで跳躍して月を見上げた。
黄色い残月。
まるで細めた虎の瞳のようだった。
一連の流れでいくと、人攫いは自己顕示欲が強い。
だからきっと、これだけ大きく事を立てれば
誘導されていると気付いたとしても食い付いてくる。
漆黒の、濡れた暗い双眸に映る金の月。
「……多神、ね」