第7章 好きになったもの。前編…芥川龍之介誕生日 3月1日記念
「「____好きな人?」」
その日。
偽物の 穏やかな蒼穹が輝く、ポートマフィア一角の
花たちの楽園、花園の紳士の宝石箱内にて。
莫大な本数もの花が咲き誇るこの楽園のガーデナーは
言わずもがな
大怪我をしている身である三島と
彼の 古くからの友人でもあり 良くも悪くも命の救った人である真綿が
揃ってそんなことを言った。
「…それ、地雷の人もいるんじゃないかい?
特に太宰とか太宰とか、煩わしそうだ」
スプリンクラーを作動させて、空調機の微調整を 手慣れた様子でこなす三島と
育ちすぎた花を、これまた器用に間引く真綿が
そんな質問をした彼……
芥川のところへと戻ってきた。
金属製の猫脚ガーデンテーブルの上には ハーブティーが置かれ
楽園に来る者拒まずといった様相だ。
「…うーん…」
眉を寄せた三島が、微笑む。
見ているだけで 心の荒みが 和らぐような笑み。
紳士だ、と思わせられる。
「それねえ……
この前、全く同じことを 誰かとも話したんだよね」
「そうなのですか?」
尋ねた芥川の 斜向かいに腰を下ろし、紅茶を飲む三島
真綿は 森の個人雇いの癖なのか
そんな二人の執事役として 立ち回る。
具体的に言えば給仕仕事。
「中也さね」
「嗚呼…そうだった。真綿もいたし、太宰もいた。」
真綿、太宰、中也に三島。
なんとも豪華に揃いも揃った顔なのだと
芥川が内心で苦笑する
「全員、幹部に準幹部さね……」
真綿も改めて口にすると
その揃い踏みのめんつに 笑みが浮かんだ
「嗚呼、それで。この前ねえ____」