第6章 花園紳士
真綿の名が、このリストに無ければ きっとこんなにも彼は喜んでいないだろう……
「そうに決まってる。 真綿の異能は、使わない方向なのかな?」
そう尋ねた三島に、森が笑みを浮かべたまま頷く。
「最終手段的には、含まれているけれど、
そこまで苦戦するようなものでもないよ。
中也君もいるし。
三島君もいるし。
ただ、まあ、西方だからね、しばらくは帰ってこれないけれど。」
「真綿がいるのなら大丈夫でしょう」
三島のミルクティー色の、ふわふわとした髪が揺れた。
小首を傾げて そう言う様は、穏やかな彼に似合っている。
「ただ…ね。
真綿君は、今、別の仕事も任せてしまっている。
そちらは片付きそうかい?」
安吾のことだ––––。
三島と織田作がいつか話しているところを何度か見たし、安吾の存在も知っているだろう。
今回の一件を知っているかは知らないが…。
「西方には、妾が先に行って 敵戦力を露払いするつもりだったんだがな…
むう……しかし、あの仕事も少々手間取りそうさね…」
頭脳派である太宰が、どこまで今回の一件を踏んでいるのか。
どちらかといえば頭脳派の真綿と、生粋の頭脳派の三島は
太宰ほど織田作と親しくしているわけではない。
会えば話す。
困っていたら手伝う。
暇そうならあのバーに誘う。
そんなもの、だった気がする。
「……中也君は、すでに今回の西方任務に使う部下たちの
調整に入ってくれている。
三島君は、任務に出る前にバイタル検査しないとだよ。
向こうは、というか外はあの温室より空気が悪い。
あの温室が綺麗過ぎるだけなのかな
何せ花の楽園だ。」
満身創痍の大怪我を持つ三島に
外界の汚い空気はその身体に障る。
「うん……真綿君、なるべく西方行きまでに
例の件のことを片付けてくれ給え」
森が机に肘をつき、手を組んだその上に顎を乗せて微笑む。
「承知したさね、 あるじ殿 ?」
机の上のファイルを回収し
三島の肩に手を回しながら、首領執務室を後にした。