第41章 慟哭……IV
【––––––……!】
高い遠吠えが、夜中のヨコハマを震わせた。
雑居ビルの林立する市街地を、まるで故郷の草原のように颯爽と駆る巨躯の獣。
見る者を射殺すようなきつい光を灯す獣の瞳は、下品な色を醸し出す眼下のネオンを睥睨する。
奸計も裏切りも、己は沢山味わされて来た。
最早人間などという生物は、視認するもおぞましい。
どうかしたのか、と
突然掛かったその声に、巨獣はフンと鼻を鳴らした。
見遣れば一人の女が立っている。
獣たる己に興味なさそうに、同じ景色を何も感情の灯らない双眸で見つめていた。
嗚呼。
嗚呼……、嗚呼、よく知っている。
よく知っているとも。
ねえ、弱くて泣き虫で殺したいくらいに憎くて仕方ない私自身
【Guuu–––uu……】
「汚らしいですか、この景色が」
喉を鳴らすなどという行為には程遠く、巨獣は己の横に立つ女に向かって吼え立てた。
そうだ、人間などという下等極まりない分際で、いつかあの月を喰ろうた己を喚んだ。
そうだ。
太陽を噛み砕き、私は後悔した。
後悔して後悔して後悔して
憎くて憎くて憎くて憎くて、
自分がどうしても許せない。
【Wo––oooo–––……uuuu…N】
「行きますよ」
【––––––……】
許さない
許さない
憎い
あの人が望んだ私になったのに
どうして、どうして、どうしてどうしてどうして
【––––…………!】
月夜に獣の咆哮が鳴り響いた。
どうして、
強くなった私のそばにはいなくて
弱いあなたのそばに、太陽が輝いているのですか?