第41章 慟哭……IV
「––––––……」
いきなり、すっと三島の濃紺の双眸が閉ざされた。
ぱさりと乾いた音を立てて、この一件の資料がテーブルに置かれる。
「……え?」
眠ったのかと中也が踵を返してカウチに近寄った。
なにも言わずにこいつが寝たのが、変だと思って……
部屋の中、それから廊下にも女はいないはず。
だから女の気配に釣られて無意識に夢に誘い込んだわけじゃなさそうだし……
「おい、三島……!起きろって…!」
三島の身体に、いわゆる『人間的疲労』は溜まらないはず。
なら、なぜ……
そこで、ふと気付いた。
夜が明けてから、三島と言葉をそんなに交わしていない。
確か、菜穂子に仮眠を摂らせた後、俺も自室に戻ってほんの少しだけ寝たが、三島は……たしか。
いつもなら……
食べた夢の話、そこで出会った奴の話、どんな味でどんな感情を得られたのかを話してくれていた。
そこまで考えて思いつくことと言えば……
「……夢を食べてねェ、とか?」
妙に言葉も交わさず、ただ黙々と同じ部屋にいながら仕事を進めていたのは
こいつの動力源である感情のリソースが減っていたから、じゃ
「……ッおい、起きろ、起きろッて三島!」
感情がないのは人形と同じだ、とこいつは言っていた。
人の形をして、そこに在るだけのものとなる。
起きなくてはいけないという感情そのものがなくなったら、こいつは
「……なに、中也」
「三し……!」
夢うつつで微睡んでいたこいつの意識が、瞳に戻ってきたと思ったら
ぐいと外套ごと、手首を引っ張られる。
被っていた俺の帽子が舞った。
ガタンッと大きな音が鳴る。
待て待て待て……!
こちらを見つめる無機物の三島の双眸に、俺の青が映り込んだ。