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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第5章 そのバーに集まる影


月の光が、薄暗く差し込む。


淡い青色をした光の朧げな柱が

臙脂色のカーペットを弱く照らした。




あの後、織田作と太宰と別れ

未だ大量の幹部書類が 終わらない太宰は 幹部部屋に戻り


真綿は、ポートマフィアの一角にある
『とある所』に来ていた…




白い着物に、青色の光が反射して

着物の白の袖口が、まるで龍のように 後方へとたなびく。



物音一つすら立てずに、真綿は その部屋の扉を開けた。

真っ白の扉は、まるで病室のように どこか質素で、物寂しい。



ポートマフィアの内装は
西洋のホテル並みに豪奢なところがあるからこういった扉は少ない。



ただ、病室の扉が横に開くタイプならば


この白い扉は、縦に……そして パーティ会場のように
両の手で開けるタイプの、両開きドアだった。



外の世界の時刻は深夜を周り
外の空気もかなり冷たい。


にもかかわらず。



その部屋には、サラサラと花が穏やかに揺れていた。



四季折々の花が一箇所に集まって愛でることが出来るのは

この世広しと言えども、近場ではこの温室だけだろう。




空調は花の種ごとに管理され
花は手作業による丁寧な手入れが込んであった。


この花園の主人の腕が判る。




そっとこの夢の中のような楽園を出れば

外界は猥雑としたものたちで溢れ、空気も淀んでいるだろう。



外国に合わせて発展してゆくのは目覚しいものの

最近の空気の汚れは酷く、それはヨコハマも然り、だ。




反してこの楽園は、外の季節や時刻など関係なしに一定に定められ、

穏やかな蒼穹と胸を満たす花風は
偽物だと判りつつも覚めたくない気を起こさせてくる。





そう。


この花園には、時間と季節がない。




「……妾だ。…もう寝てしまったか?」




ポートマフィアの一角にある、この温室の中は

いつでも、何時でも、外に関係なく昼間であり

季節は春。



頭上には精巧な造りをした 本物そっくりの青空の天井が広がり

頬をなでる暖かな春風も、作り物だった。





「いいや、寝ていないよ。

こっちに来て? 真綿」




偽物だらけの 夢の中。

楽園を思わせる花園の紳士。
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