第33章 Carmine tears
『×月×日……様、悪阻のため来院』
『×月×日……様、胎内の摘出子の性別の確認に来院』
産まれたての子どもの足跡や、足に括り付けるためのゴム製のベルト。
さすがに個人の写真はなかったけれど、子どものためにと揃えられた乳児遊具。
「沢山の女性が、あの廃病院を頼りにしていた。
でも、先の大戦で……」
『×月×日……様、水子堕胎申告』
『×月×日……様、不妊治療申告』
『×月×日……様、胎内の日ル子の摘出申告』
そこで私はその記録を見つけて、頭が痛くなった。
どれだけの産まれてくるはずの命を捨てたのか。
「は……?」
「大戦が終わって、このヨコハマは信じられないくらいに物騒になった。
未亡人が襲われるなんて事も、日常茶飯事だったんだよ。
その時代はね」
交差点が見えてきた。
土煙が幾度も上がり、なんだか沢山のバージンキラーがいるのが判る。
「この続きの謎解きは……あそこでしようか」