第32章 Vermilion Bullet ……II
「悪いね、遅れちまッたよ!」
わらわらと沸くバージンキラーを片端から叩きながら
菜穂子は本命を、中也は周りを露払いする。
そんな時に黒煙を切って、駆けて来たのが……
「由紀の救助は終わッたよ、体育館に運んだ!
あとはこっちの仲間が何とかしてくれるだろうさ」
先ほどまで共闘していた、白衣の女性だった。
金色の蝶々は、この煙の中でもまったく燻まず、濁らず、
それはその彼女の芯の強さを表しているようだった。
「晶……ッて呼ばれてたか、あんた」
「嗚呼、そうさ。"クロ"?」
「犬じゃねェっつの!」
クロ、先ほど由紀が中也に付けてやった偽名である。
中也の全身が黒いから故の……なのだろうが、
はたまた三島が以前 腕に抱いていたあの黒猫が、中也に爪を立てた事からの皮肉なのか。
後者ならあとで詰るところだろう……
「妾も手伝うよ? 治療殺菌、縫合消毒なら任せなァ」
「ハ、とんだ狂気上がりの医者くれ……ッてわけか!」
「お二人とも、私の異能力の目が届く範囲にいて下さい。」
与謝野と中也、菜穂子が
バージンキラーを睨みつけた。
相手五十に対して、こちらは三人に一頭。
背水の陣なのには変わりない。
それでも–––––
「いくぞ!手加減は無しだ」
「滾るねェ、出し惜しみするんじゃないよ?」
「いきますね……」