第4章 静謐に佇む
私の上にいる真綿がふと笑った。
白い着物が、まるで白無垢のようで
こんなにも汚れた私が、触れてしまってもいいものなのか…なんて思わせられる。
「好きっていうのは… もう充分過ぎるのにね、
言葉に出来ないくらい、不思議なくらい溜まっていくんだ…」
いつか、両者の身に下るであろう天罰を共に受けよう
人の命を奪いながら生きてきた。
たとえ地獄に堕ちても、一緒にさえいられれば。
「好きで、好きで、どうにかなりそうなくらいのこの『好き』は、
真綿に伝わらないとだめな気がする……」
その純白の着物の袂に手をかけて、澄んだ藍色の襦袢も剥ぐ。
そして薄着も。
綺麗な胸が覗いた。
その美しさにぞっとする。
「多分、私たちはすでに救いようのないくらい
深い所まで堕ちているんだろうね…」
下にいる私を見つめている真綿が
私の首から、頬にかけてをゆっくり撫でる。
「真綿を嫌うことが…考えられない、なんて
不思議なものだよね…
真綿はさ、自分の異能力を見ない方が良いって言ってたけど…
異能を使っている君も、きっと綺麗なんだよ」
シュッと私は、黒のネクタイを解いて
覆い被さるようにして腕の中に入ってきた真綿の手を縫い付ける。
私の頭を、その手の中にいるようにしてから結んでしまった。
「機会があれば、さね…」
眉を下げて、穏やかに微笑んだ真綿を抱きしめた。
「嗚呼… 愛してる…」
「…そうか」
「愛してる」
「何度となく尋ねても、妾の返答は同じなんだからな。
誘導法だろうよ、その手口……」
「あはは、バレた?」
無邪気に笑う治の笑みは、とても愛らしい…
それでいてどこか、今にも泣き出してしまいそうな
そんな空気を治が作ってしまっているのも
妾の所為だと、判っている