第29章 La Vierge…III
「く––––!」
【……、……! ……!】
菜穂子が紙一重で身体を反らした。
びゅ、と風切りの音とともに、上へと舞った髪が千切れる。
頬に朱線が走って、鋭い切れ込みを伴い 血が流れ出す。
ぱたぱたと先ほどの地鳴りでひび割れたアスファルトに
顎を伝って血が滴り落ちた。
「––––あれェ。 バ レ ち ゃ ッ た ?」
ぞわりと全身が、粟立ち逆立つ。
やばい、不味いから逃げろと。
「……そう。 今は、その軍警を乗っ取っているのですね。バージンキラー」
「おカしいなァ、おカしいなァ、お カ し い な ァ……。
どうして、バレる要素があったかなァ」
獣に騎乗し、菜穂子が乗っ取られた軍警……
バージンキラーを睨み据える。
ただ乗っ取られただけのあの軍警がかわいそう。
「私はただ死亡と言った。貴方は殺されたと言った。
そこでもう、貴方の信頼は皆無」
「あァ〜……あノときかァ」
警察帽を雑に脱ぎ、帽子の中から出てきたのは
「動 く と 撃 ツ よ?」
拳銃。
警察で配布される量産型のやつだ。
「……火を放ったのは貴方ですか」