第28章 La Vierge…II
電話を切って、居間の襖を開けた。
座布団に座した 社長、乱歩さん、国木田に新人の太宰。
「社長、妾はこれから少し出てくるよ。用事が出来た」
彼らに端的に言ってから、医療バッグをたぐり寄せた。
「了承した。
もしかしたら昼くらいには真冬と合流出来るかもしれない。連絡を入れる」
うん、と頷き与謝野女医が宿舎から出る。
足取り的には、日曜日に誰にも断りを入れずに出掛ける少女のそれ。
「……用事、ね」
「乱歩?どうした」
乱歩の翠玉の瞳が、意味深に細められた。
眼鏡はかけていないが、全てを見透かしたような反応だ。
「いーや、何も。 じゃあ僕は真冬の迎えに行こっかな。心あたりあるし」
「俺も行きましょう」
立ち上がる乱歩に続き、国木田が立った。
「太宰はどうする」
「んー……」
もしも、その真冬という彼女が
この街の焼却を防ごうと言う魂胆なのだとしたら
出来る限り、今 出来るだけの手筈は整えておきたかった。
「では、昼に合流する際に私もそちらに向かいます。
それまでは別行動で。
私だってちゃんと出来るんですから」
太宰のウインクは、様になっていた。