第28章 La Vierge…II
「お早うございます、社長」
「うむ、お早う。 全員揃っているな」
翌朝、居間に集った社員一同に
社長が冊子を流してゆく。
国木田が見回す中、眠たげに半目で
舟を漕いでいる乱歩を揺する与謝野女医。
太宰はぱらぱらと手中の冊子を流し見していた。
「真冬が居ませんが––––」
「嗚呼……、昨日の夜、いや今日の明け方に出た。
用があると言っていたが」
やっと目を開けて ハンチング帽をかぶり直した乱歩が
ふうん、とだけ頷いた。
「働き詰めだねェ……ちょっと強引にでも休ませた方がいいね」
「ま、それには賛成だね」
与謝野女医が座布団に座したところで
社長が口を開く。
「これまでの戦果だな……
他の異能企業がいるとはいえ、矢張り捕まっていないのが大きい」
「なんかいい方法ないのー?
というかー、真冬なんか言ってなかった?」
真冬と最後に話したのは、治療を受けていた社長と国木田である。
「方法はある。
だが、それは 今のこの現状では駄目だと。
打つ手があって、選べる内は してはならない」
「……社長は、その方法……真冬から聞いたの?」
「嗚呼」
一度だけ首を振った社長は、重い面持ちだった。
それを行使するには、責任が重すぎる。
「……この街を駄目にしてしまう。
だから、駄目だ」