第27章 La Vierge…I
《まあまあ、落ち着いて。
もしかしたら、君の考えている事とは違う方法かもしれないだろう?》
液晶パネルの向こう側が 波紋のように揺らいだ。
首領が眉を下げて、くすくすと笑う。
しかし中也は、まだ眉根を寄せたままの仏頂面で言い返す。
「いいえ–––– この現状で、三島にだけ出来る……そんな方法なんて一つしかありません」
《もし、仮に、"そう"なったとして……
中也君がそこまで肩入れするような事じゃない気がするのだけれどね》
返ってくる首領の言葉は 冷静だった。
突き放してはいない、されど 三島の問題である、と食い下がる。
「……ですが」
《……少々 意地悪な言い方になってしまったかな》
「いえ」
思えば、中也にとって三島は
太宰がいた時くらいからずっと……
見ればそこにいた、ふと気付けば隣にいて当たり前の同期だった。
心配だなんていう安い言葉では足りないくらい、
その存在は有って、認められて当たり前だった。
《……ま、太宰君も真綿君もいない今……
ポートマフィアの方針は三島君に頼りきりだからね。
失くしてしまうと、かなり惜しいのだけれど》
「有難いお言葉ですね」
ふふ、と三島がいつものように笑った。
《……では、今のところは その三島君の手段は使わない方向でいこう。
ただし》
首領の言葉、皆がそちらを見据えて 聞き入った。
《其の方法だと、必ずそちらの街を潰す。
それは 最終手段ということで……
不味いと思ったら、三島君の一存で、三島君の方法を行使する。
いいね?》
「は」
そこにいた4人が恭しく頭を下げた。
結局…… 三島と首領を説得するだなんて
出来なかった。