第22章 白と黒の境い目…太宰治誕生日 6月19日記念
「真綿……太宰……
って、何だい『由紀君』て……」
目をゆっくりと開けた三島が、背後の声二つに
振り向く事なく笑った。
「ふふ。私も君を、今度からそう呼んでも良いかい?」
「由紀、は真綿だけだったんだけれど。悪い気はしないかな」
ようやく振り向いた三島の紺碧の瞳に、二人の姿が映った。
そして苦笑して口を開く。
「二人の終わりを邪魔する気はないよ。
僕にとっては、毎回のことをまた繰り返しているだけだからね。」
ああ、もうほら、砂浜の両端から侵蝕崩壊が迫っていて
空だって向こうはもう存在していない。
幻想的な光の粒が
辛うじてこの崩壊する夢を支えていてくれているけれど……
「もう眠りから覚めるみたいだよ。1分もない。」
「だーかーら!さっ、由紀君!華やかに三人で終わろう!」
「はぁ!?」
割と本気で呆れた声が出て、僕は太宰の額を指で弾いた。
「あいたっ!」
「夢の番人を気遣ったって意味ないのだけれど。
……でも、太宰にしては……」
「なぁに?私が何だって?」
僕の横で、真綿がくすくすと笑っている。
嗚呼、懐かしいね、この雰囲気。
「ていうか、私は君のこと由紀君って呼んだんだから、
君もそろそろ苗字呼びやめない?」
「今更?」
「今更!
ほら、もう夢が終わるし、良いじゃないか!一回くらい!」
急かす太宰が僕の手を取る。
もう片方の手は、真綿が繋いでいた。
見遣れば、太宰と真綿の手もしっかりと繋がれている。
「––––……」
そこで、夢から覚めた。
僕は、太宰のことを治って呼んだと思うかい?