第21章 Garden of Daydream…III
時は戻って、数時間前。
「……まわ……いえ、その。
夫人、帰って来ませんね。」
「そうだな……。私たちが渡したものは1日とかからない物だが」
巡り巡って何やかんやと面倒な事態に巻き込まれたことなど知る由もなかった。
夜も遅い時を回った頃、真綿からの連絡を待っていた居残り組……
否、有志で残った福沢と国木田、そして乱歩と新人の太宰は
残った仕事をやりつつも電話を待っていた。
その時。
「……!」
「おっ」
しんと静まった夜の社内に、一本の電話の音が鳴り響いた。
乱歩が目を輝かせ、福沢が受話器を取る。
「武装探偵社です」
《こちら、内務省特務課の佐藤と申します。
貴方は武装探偵社の福沢社長でお間違えないでしょうか》
「嗚呼。依頼か?捜査か?」
異能特務課––––。
差し詰めこの武装探偵社が、異能力者を
『保護』や『無力化』することを掲げているのなら
特務課は異能力者を『排除』する組織だろう。
《依頼です。
武装探偵社のある街の隣の市で
最近、男性ばかりを殺害する事件が連続しています。》
冷静な男の声が、手元にある資料を見ながら言っているのだろう、平坦な声を響かせてきた。
《我々も手を焼いていまして、そちらの探偵社に限らず各地の異能企業にも協力を仰いでいます。
あなた方にもそれに尽力していただきたいと思っているのです。》
言い終わると同時に、社のコピー機の隣に置いてあるファックスが動いて、紙がびろびろと何枚も吐き出された。
《今そちらに送った書類が詳細です。
……嗚呼、今夜もすでに一人の男性が狙われたとの事です。
まあ、そばにいた一般人女性に助けられたと事情聴取はしていますが……》