第20章 Garden of Daydream…II
数日前
「なァ、三島」
「何だい?」
真昼。
否、現時刻は夜中の2時を回った頃だが、
その一室……その箱の中だけは、切り離された真昼間だった。
「次の任務なんだけどよォ……」
「嗚呼––––、うん、聞いているよ。」
眼下の花を間引きしている三島。
少し離れた所にある、三島の天蓋付き遮光カーテンの幕に覆われたふかふかのベッドに座す中也。
そこから傍にある猫足のガーデンチェアには菜穂子。
ポートマフィア五大幹部その二人と、その護衛一人という
豪華な顔ぶれだった。
「……上橋、それを中也に渡してほしい」
「は」
ガーデンテーブルに似つかわしくない、まっ黒いファイルを中也に手渡した。
別に中也とは長くなった仲なのだから、そんなに堅くならなくても……といつも思うが、口に出すには憚られた。
言わぬが花だ。
言わぬは言うに勝つともいう。
––––あの日。
あの日以来、二人の関係がどう変わったのかと問われれば、
何も変わっていないと断言できる。
少し足りとも、何も、僅かにも変わっていない。
次に顔を合わせた時、二人はお互いに無かったことにしたみたいにいつも通りに話すことが出来た。
変化を望んだのは菜穂子だったが、望んだことは何も起きない。
繊細な機関ほど、一部が狂うと全てに影響を及ぼす。
それを知ってしまっているから。
「うッわ……面倒くさそうなモン押し付けられたこった……」
「面白いだろう?バージンキラーと呼ばれている。
自らが去勢した男を次々と殺害しているのさ」
そう聞いて眉を歪めた中也をなだめるように笑う三島。
それを見て、一層、中也がしわを濃くした。
「彼らでは首領を敬遠して近付かない」
僕たちがやらないと駒すら動かせないのなら、やるしかない。
「……ま、うん、その辺りは大体、調整可能範囲だよ。
まだ修正が効くからね」
「……策士め」
嫌なものを見るかのように
中也が三島の曖昧な笑みをみてそう言った。
「そりゃあねえ……。
肉体労働できないぶん、頭脳戦ならお任せだよ」