第19章 Garden of Daydream…I
「ほら、これさね。」
「ありがとう、真綿ちゃん」
その日、なぜか探偵社員から渡されたものが
次から次へと場所移動を促すかのように、彼女をヨコハマから遠ざけた。
「うむ–––––。
……む、待つが良い。妾をその名で呼ぶのはしばらく控えてほしいのだ」
「え? あら、なんで?」
巡りに巡って真綿が来たのは、隣町からもだいぶ離れた(ヨコハマならなおさら––––)大きな街だった。
そこのマーケットに店を構える女店主に渡してほしい、そう言われ渡されたものを配達した真綿だったのだが……
「諸事情だ。しばらくで良い、もし見かけたら……
そうだな、福沢夫人とでも呼んでもらうかや?」
「あらあらぁ」
くすくすと二人して肩を揺らして笑う。
ガールズトークを楽しむ女子高生のようだ。
果たして真綿のこの言葉が、先の福沢の言葉と皮肉にも重なり、
後にひと騒動を呼んだのは言うまでもない……
「おや、イナバ屋のお姉さん。今日はでございます!」
「あら、お巡りさんも今日は。昼から見回りご苦労様です。」
「若者の特権さなぁ……」
「ほんとよねー……って、福沢夫人もまだまだ若いじゃな〜い」
真綿と店主が遠い目をして呟きあった。
「あの、ご婦人方。ここ最近、妙な殺人が増えているのであります。
お気をつけを。」
「やだ、怖い……」
「妙な殺人かや?」
真綿が首をかしげた。