第18章 色彩
視線を感じた。
まだ仕事終わらないの、という視線だった。
そっと両開きの幹部執務室のドアを見遣れば、その子はそこにいた。
「……おいで」
そう言えばにゃーんと小さく一声鳴いて
チリンチリンと首の鈴を響かせながら僕の足元に擦り寄ってきた猫。
この猫は、その昔 任務後にエリス嬢が連れてきた猫だ。
その日は中也と任務があってポートマフィアを抜けていた時、
帰ってきてすぐに首領執務室に呼ばれて行けば託された。
「ユキ。この仔猫、あなたに預けてもいい?」
「うん、いいよ。」
二つ返事で即答し、その猫を受け取った。
「おーい! 寝てるかい三島君!
いや君はきっと起きているよねまだ!」
「太宰?」
もう深夜テンションなのかな、太宰。
まだ夜中の2時だというのに。
そう思いながらノックもなしに開け放たれたドアの向こうにはやはり太宰がいた。
「ノックくらいしなよ、太宰。
僕が女性連れ込んでいたらどうするの?」
「うん気まずいね」
「だろうね。」
判っているじゃないか。
「今日は任務お疲れさま〜ってのと、やっぱり幹部用の報告書終わってないよねーってのでお酒持ってきた」
「僕の部屋の寝室に来たのかと思ったよ。よくするだろう、君」
革張りの一人用ソファを引いて、太宰を座らせる。
「そう言えば三島君、エリス嬢の……嗚呼、そうそう。その猫」
僕の椅子の上で丸くなった猫の眉間をなでてから
腕に抱いて動物用ベッドへと横たえた。
「犬よりは可愛いよね、猫。」
「太宰の犬嫌いは健在なのかい?」