• テキストサイズ

威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第16章 うたかたの夢 …4月1日


「ここ……は」


ふと目が覚めると、心地の良い春風が頬をなでた。



目を細く開けると、白んだ景色に映る極彩色の花畑。

虹色に彩られる花の絨毯に、幻想的な朝焼け。


否……朝というよりは……



「朝というよりは……?」


何だろう。

ここに一度、来たことがある気がしたのですけれど……


眠っていた身体を起こすと、微睡む脳から眠気が薄れていく。




「おはよう。」


唐突に後ろから声を掛けられ、私は振り向いた。



視界にちらつく私の長い黒髪が閃き、彼が微笑む。



「 ––––––ぁ……、あ、あ……!」



知っている。

私は、あなたを知っている……!


「おはよう、ナオミちゃん。」



誰……?

知っているのに、名前が思い出せない。


知っている声に知っている体温。


知っている気配。

ぜんぶ、知っているのに。



「僕が誰なのかは–––– 必要ないだろう。
こうして君と二人きりなら、呼ばなくても良いしね」



差し出された手に手を重ねる。

嗚呼……以前も、こうしましたわね…私たちは。




「却説……君の意識を僕の夢に引っ張り込んだのは…

うん、今回はちょっとだけ特別。
ちょっとのイレギュラーも兼ねているんだ。」


「イレギュラー…ですの?」


花畑を二人で歩く。



視界いっぱいに広がる花道を歩いて、時折彼が花を摘み取る。

当たり前のように私に合わせてくれる歩調がありがたかった。




「そう。

この夢、僕の用意した白昼夢ではわりと何でも許されるからね。

こうして眠れていない女の子を連れ込んでは、
眠気を誘うためにピロートークをしているんだよ。」



……ということは……


「夢の外の私は眠っているけれど、意識が眠っていない…ということですの?」


「そう。流石ナオミちゃん。
身体は休んでいるが、中身が寝ていない状態なんだよ。」


花畑の中央に座り込み、彼の隣で微睡む。



すぐそこにあった彼の肩に頭をもたれさせた。

寄り添った私に腕を回してくれる。



「君が眠れていない原因は何か、自分で判るかい?」

「それは––––」



ええ、ええ。

勿論。


原因は––––

/ 686ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp