第14章 明くる日の戦士たち
彼女と肌を重ねるのは、初めてなんかじゃない。
最初は、そう、ちょっとの興味。
仕事や任務の成果のためなら、例えどんなことをしてでも––––
最終的に殺してしまうのだし、彼女は構わず厭わずだった。
だから、勿論何もかも受動的で……
ただ、拾ったのは確かに僕だったけど…その頃の僕は福沢さんに真綿が従えばいいかなって思ってたから……
だから真綿を福沢さんに預けた。
どうせ住まわせるのも、福沢さんの家だから…って。
あの日だって。
目の前の地獄から、朽ちる寸前の真っ白い君を拾い上げた。
純白だった着物は血の色で紅に染まり、濃紺の羽織もぼろぼろ…
水溜りが目の前にあったけれど、靴が濡れることも気にせずに、あの時の僕は躊躇わずに彼女に駆け寄った。
世界の御名を冠する暗殺者。
この白い彼女が行くのは、間違うこともなく虚空の地獄。
ただ、まだ、まだだよ。
そこに落ちるのはまだ早い。
刑に処されるのはまだ早い。
抱き上げる彼女から、血という中身がこぼれないようにそっと抱き上げた。
「君は死んだ。
あの時会った、君という存在は、こうして幕を下ろした。
お疲れさま。
じゃあ、名もない君という透明な存在に、この稀代の名探偵が残酷なことを告げよう」
夢の中で微睡む彼女に話しかける。
この世のどこかの最果てに、彼女の行き着く先があるのだとしても。
まだ、早いよ。
価値がなくなったのなら僕が君に、所有物として価値をあげる。
僕たちが君の道しるべになってみせる。