第10章 スイートセンチメンタル …3月14日
「え……」
立原さんからのその言葉が意外で
私は言われるままにそれを受け取った。
淡い灰色のこれは三島幹部の。
私が貰ったのは薄紫色のラッピングだった。
「んー…、あー、なんだ、今日ってホワイトデー、なんだろ。
バレンタインありがとな上橋」
「え!? 立原さんからですか」
てっきり銀さんが作りすぎた義理を返してくれたのかと思いきや
確かに立原さんたち黒蜥蜴部隊にも渡しましたが…
「た、立原さん……まさか手作…」
「いや、買ッたわ…」
ですよね……?
銀さんは真綿様にご享受して頂いていましたし、
料理が上手になったのは知っていましたけど…
「バレンタイン、美味かったよ。
んじゃそれ、幹部に宜しくなー」
ひらひらと手を振って立原さんが楽園から去って行く。
私の手元には二つのお菓子……
「……三島幹部に渡したくない…ような…って私!」
バレンタインデーの時、私は三島幹部だけ違うものをあげたはずなのですが……
いつもみたいに穏やかに微笑んで「ありがとう」って……
もうがっくりだった。
それでお終いで、望んだことは訪れない。
いやむしろ、あの笑みは……
私の気持ちが判っていながらの反応だった……
(そうだとしても、構わない)
現状維持に逃げてしまった私
このままなら、付かず離れずを保つことが出来る
だって、好きなものを……
手放したくなんてない