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日章旗のデューズオフ

第2章 ライナー・ブラウン(進撃/疲れない恋の仕方)



(あ、なんか……)

勇気を振り絞って口にした台詞はライナーだけでなく俺自身の気持ちも同時に潤していた。嗚呼、すきだと伝えるのってこんなに怖くて気持ちよくて幸せなんだって思ったら、今までライナーからの一方的な好意で胃もたれを起こしていたのが馬鹿みたいだった。応えれば良かったんだ、たったこれだけでつっかえがなくなる。

「……ッ是正」
「ん、なに――……」

心が解れるっていうのは、ときに隙に成り代わるものだ。すっかりとろけていた気持ちは視界が真っ暗になった事で混乱に引き締まった。まばたきをすれど全く晴れない闇の或いは直ぐ様さま退いたものの、唇の濡れた感触や鼻先三寸もない距離のハンサムから全てを察する。

「おい」
「ん?」
「ん、じゃねぇよ……今なにした」
「なにって、キスだ」
「なんで」
「お前が言ったんだろ、俺としたいって」

照れたようにはにかむ姿にグッと来ないわけではないがTPOは弁えて貰わないと今後の生活に大きく影響を及ぼす事が分からないのだろうか。分かってないからシたんだろうけどな。
俺は今の今までのデレモードが一気に吹き飛んだ。せっかく俺が素直になってもすぐこれだ。甘い雰囲気もたまにはまぁ良いかなーなんて思った瞬間にぶち壊される。こいつ!自身の!手によって!

「いてっ……おい規則的に叩くなっ、っつか割りと本気でいてぇっ!」
「今キスしろなんて! 言ってねぇな!」
「いててて! する流れだったろ?!」
「っとにデリカシーのねぇ奴だなっ、皆がいる前でやるやつがあるかクソ野郎っ!」
「……ってめえの彼氏によくクソ野郎なんて言えるなコノ尻軽!」
「だぁれが尻軽だ万年発情期が! 今まで言葉足らず甘え足らずだったのは謝っただろうがっ、今度はライナーが俺を裏切ったんだぜ、っつーのに暴言とは何様だテメエッ!」

抱き合ったまま怒鳴り合う俺達を見かねて仲裁に入ったのは意外にも目を白黒させたエレンだった。兄貴との幸せな時間を奪うだけでなくライナーとの時間まで奪う気かー!とか、のぼせた頭は妙な怒りに支配されて、羽交い締めにしてくる奴に八つ当たりしてしまった話もまた、別の話。



終わり
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