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日章旗のデューズオフ

第17章 【拾肆】宇髄(鬼滅/最強最弱な隊士)



「その判断は身内に向けた甘さではないと誓えますか」と食い下がったのは霞柱殿だ。示し合わせた様に「今更名前本人以外に本気も何も出せるかよ」と悪態を続けたのは風柱殿。
其処へ持って来て沈黙を貫く悲鳴嶼と、瞳を爛々と輝かせる杏寿郎さんは──彼ら二人に関するこれ以上の形容は言を俟たない事とする。
「ッは。誓うわけねぇだろ。身内贔屓上等だ。お前らは宇髄様の大事な義弟を嬲り過ぎた。迦楼羅だなんだと意味の分からねぇ幻想に取り憑かれ、己が欲求を優先した結果がこの惨状だ」
血液が膠着いた峨嵋刺を眼前に翳して注意を引きながら、獲物を横取りされまいと息巻く二人を鼻で嗤った天元は、腕の中に在る俺の所有権を誇示するように一層深く、暴力的なまでの力で抱き込んで来る。その仕草と表情はちぐはぐなれど、行動原理は一緒なのかもしれない。
(……ん、……耳鳴、か)
急に頭を揺らされたからだろうか、頭蓋が割られて脳髄が露出したところを北風が撫でたような痺れと共に、高音域の耳鳴に襲われる。鼓膜を占拠した金属音が天元の怒号と風柱殿の罵声、雪を噛む草履の擦過音を覆い隠していく。
密着する身体が事ある毎に激しく振動するから、侃侃諤諤と非難を浴びせ続けているのだという事は伝わって来るが、その鳴動すらも今の俺には対岸の火事のように思えた。
「……わりぃ、ちょっとだけ、一瞬だけ、目ぇ瞑る……」
肺腑に残留していた燎原の火と共に、掠れた声を喉奥から放流する。天元の耳に届いたかは定かではない。『説得が成功して、四人で模擬試合の続きをする算段がついたら起こしてくれ』といった頼みも脳裏に有ったが、果たして其れは、声として表現されただろうか。
昏い微睡みの淵へと沈みながら、嘗て受けていた天元からの無償の慈愛を、親父から楯と成って守ってくれた、あの懐かしい想い出を──深い安堵と共に、ゆっくりと咀嚼していた。



第十四話 終わり
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