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日章旗のデューズオフ

第11章 【捌】悲鳴嶼&宇髄(鬼滅/最強最弱な隊士)



(……)
対して天元は、残存する苛立ちで背中を膨らませながら美少年の反対隣へ回り込む。深緋と青柳といった奇抜な色の爪紅が塗られた右掌で俺の肩を無遠慮に鷲掴み、それを支えとしながら胡座を懸いた。身体の均衡が取れない人間を払い除けるほど落ちぶれてはいないので、好きにさせる。
「っつうか天元をオッサンって……ふ、言うねぇ」
「あ?」
「お前、名前は?」
「人に名を聞く時は自分から名乗るもんだろ」
「だな。俺は名前。岩柱の継子だ」
「玉ジャリジャリ親父に継子居たのかよ」
「悲鳴嶼さんのこと、玉ジャリジャリ親父って呼んでんの?」
「お前も奴ほどじゃねぇが、相当つえーな」
「そりゃどうも」
「俺は山の主、伊之助様だ!」
穢れを知らない翠玉を煌めかせて胸を張る姿に、まんまと毒気を抜かれていく。童のような知能と語彙に、呆気に取られたと言っても良い。さりとて、鍛え抜かれた肉体は彼の弛まぬ努力を物語り、人の力量を見抜くだけの慧眼は彼の聡明な本質を示している。
悲鳴嶼を珍妙な渾名で呼ぶ度胸も大したものだ。伊之助でなければ不敬を赦さないかもしれない。彼なら良いかと思わせる不思議な魅力を持った美少年だ。
「全員集まったか。柱合会議を再開する」
伊之助へ関心を寄せ始めた折、悲鳴嶼が低く唸った。それだけの事で活気に溢れていた室内が静寂に包まれる。剰え、紫電が奔ったかのように空気が張り詰め、皆が姿勢を正すに至るのだから流石の威厳である。まぁそれを敢えて無視する豪胆な人間も間々居るわけだが。
「改めて、先の話を詰めていく」
「待ったァ。その前に名前の日輪刀について触れるべきじゃねェのかよォ。それとも何かァ、自分の計画が水に流れるかもしれねェから無かった事にしようと――」
「……不死川。その件は保留にしろと警告した筈。まだ口を挟む気ならば出ていけ。お前抜きで話を進めるだけだ」
「――っは。足元見やがる」
品位が欠けた笑みを崩さず、執拗に悲鳴嶼へ噛み付き続ける風柱殿の事を指しているのだが、巡り巡ってこの衝突すらも俺のせいなどと言われたらどうしようか。まぁ辿れば元凶こそ俺と言わざるを得ないけども。

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