第41章 どうしようもなく好きだったから。
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手から伝わる温もりが温かい。
泣き腫らして真っ赤な目を擦りながら
先輩を密かに見上げた、
『っうわぁ!』
・・・つもりだった。
先輩もこっち見てたのだ
心臓に悪い・・・
【虹村】
「・・・なぁ」
『はい?』
そう言ったっきり、
先輩は口を開けようとしない。
頬をポリポリと掻いて
顔を背けるばかりだ。
でも、その左手の薬指──
───────エンゲージリング、が
キラリ、と光っている。
それが、嬉しくて。
わたしは咄嗟に緩む頬を摘まんだ。
『・・・なんですか?』
そろそろ本題を切り出してほしい。
先輩の顔を覗き込んで、
急かすように声をかけた。
【虹村】
「・・・父さんが、さ」
お父さん?
先輩のお父さんがどうかしたのだろうか。
【虹村】
「お前の父さんのこと、話してたんだよ」
『えっ・・・?』
元々、わたしのお父さんと
先輩のお父さんが交友関係であることは知っていた。
でも、お父さんがいない今、
何を話したんだろう・・・?
首をかしげて黙りこむわたしを見て
【虹村】
「・・・ちょっと寄るぞ。」
とだけ、呟いた。