第36章 身近なモノ
『・・・でもさ、なんでボールが?』
【緑間】
「・・・練習なのだよ。」
おーおー練習か。
偉いねぇ、尊敬しちゃうよ。
『・・・誰も、来ないよね』
【緑間】
「昼休みくらいのんびりしたいだろう。」
そっか。
それでも、黒子くんとかは来ると思ってたのにな
努力家だし、頑張り屋。
似てるかもしれないけど、少し、違うんだ。
『・・・前から思ってたけど、3Pのラインってめっちゃ遠いよね』
【緑間】
「そうでもないのだよ。」
そうでもあるの!だよ!
ボールを持つ。
バレーボールとは比べ物にならないくらい重い気がする。
この重さは、みんなの努力の重さに合うのかな。
こんなに、重いボールでも、みんなの頑張りには勝てない気がしてる。
『・・・どこからでも、入るんだ』
やっぱり、才能開花し始めてる。
それが、これ以上なく苦しかった。
【緑間】
「・・・確かに俺は、どこからでもシュートが入るのだよ。
でも、」
───それは、仲間が居たからなのだよ。
『え、・・・』
原作ではない答え。
緑間がそんなことを言うなんて、思ってもいなかった。
『なんか・・・』
でも
それ以上に
『・・・なんだか、嬉しいよ・・・っ』
とても、嬉しかった。
涙が流れてる。絶対流れてる。
でも、緑間は慌てる様子もなく。
止めどなく流れる涙を眺めていた。
目を細めて。
壊れ物を優しく扱っているような目で。
・・・ううん、違う。
きっと私はもう、壊れてる。
「壊れ物みたい」じゃなくて、もう壊れ物なんだ。
普通は人に見放される『これ』を、
あなた達は見放さないでくれた。
それがとても、嬉しい。
人ってみんな儚くて惨めかもしれないけど、
頑張ることって格好悪いのかもしれないけど、
それでも、
こうやって輝いてる人達って、
綺麗なんだよな・・・
眩しくて、目映くて、とても綺麗。
その笑顔が、大好きなんだ。
宝物が、こんな身近にあった
それだけで、全力になれる