第33章 どうしようもなく辛いこと
いつのまにか、眠っていたのだろうか
着いたよ、という声で意識がクリアになった
『・・・こんな時間に、ごめんね。
・・・運転士さんも、ごめんなさい』
扉を開けてくれた運転士に頭を下げる
相手も、軽く頭を下げた
【赤司】
「・・・雨がひどくなってきたね」
『・・・うん』
そんな他愛ない話も、彼の気遣いだと実感した
やっぱり、優しい人だ
胸のどこかが、温かくなった気がした
【赤司】
「・・・・・・はち」
『・・・あ、ごめん』
赤司くんの部屋に行くまでに息が上がってしまった私は、差し伸べられた手を迷いなく握った
あったかい
【赤司】
「そこら辺に腰かけてくれ
・・・なにか服でも貸そうか」
『気遣わなくていいのに。
いきなり押し掛けてきたんだし、制服でいいよ』
【赤司】
「・・・皺になるだろう」
ハンガーを手渡され、渋々ベストを脱ぐ
それを壁にかけ、高級そうなソファーにどっかと座った
『・・・わたしのこと、どう思う?』
【赤司】
「好きだよ」
『そ、そうじゃなくて!
嬉しいけど!
・・・なんか、変わったところ、ない?』
【赤司】
「・・・目の色が変わっているな」
鏡を渡され、分かっているけれど見てみる
すると、真っ赤だった目が、琥珀色になっていた・・・
無意識に、赤司くんの目を見ていた
【赤司】
「・・・・・・そんなに見つめられるとさすがに照れる」
『・・・あ、ごめん』
【赤司】
「・・・いや、いい。
・・・それより、その目と今の状況は何か関係があるのか?」
『・・・うん、そうかも。』
───わたしがこの世界に来た本当の理由
それは、赤司くんの『帝王の目』を、代わりに受け持つことだったのかもしれない