第32章 抑えられない
・・・なんてね
いや、冗談言ってる場合じゃないけど
薄々、感づいてはいた
自分の中の、何かがおかしいって
先輩のあの目、
先輩のお父さんの言葉、
自分の中にぽっかり空いた何か。
『・・・わたし、どうすればいいんですか』
【虹村】
「・・・いや、知らねーけど。
・・・ん、もういいよこの話。無しな」
それだけ言って、部屋を出ていく後ろ姿を見ているだけ
でも何故だか、涙は浮かんでこなかった
『・・・悲しくない、んだね、自分』
───無意識に、携帯を取り出していた
『・・・もしもし?』
今の私に、彼は必要で、『彼』は必要じゃない、のかもしれない。