第32章 抑えられない
『会いたい』
そう思うだけで、きっと何かが変わっていってるんだ
こんな感情、知らなかった
不安とか何もかもから助け出してくれたあの人に
泥沼から引き上げてくれたあのアヒル口に
今すぐ、会いたい、なんて
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『せんぱーーーーーーい!』
【虹村】
「───うおっ!?」
どこかに出掛けようとしていたのか、玄関先で靴を履いていた先輩に何故か飛び付いていた
【虹村】
「いだっ!!!?」
・・・・・・なんか聞こえてきたけど、まぁいいや←
ぎゅっと首に腕を回して、力を込める
【虹村】
「ど、どうしたんだよ・・・っ
・・・つ、つか首・・・!」
『先輩に会いたくなったんで!
すっ飛んで帰ってきましたよ!』
【虹村】
「そ、それはど、どうも・・・」
『えー、なんか嬉しくなさそーですねー』
なんだかヤケになって、ぎゅぅぅぅうっと抱き締めた
【虹村】
「・・・・・・・・・・・・・・っの」
『え?』
なぜか震えている手で掴まれて、その瞬間
『───ひあっ』
耳に違和感があった
え!? 何いまの!?
『ちょ、え、なっ、先輩!』
【虹村】
「・・・・・・仕返し」
なんの仕返し!?
え・・・っ
『!! っ・・・!』
耳をなーぜか.甘噛みされて、声が出そうになる
・・・私だってそりゃあさ、思春期ですもの
そういう知識だってあるわけで
声を抑えてると、男の人って嬉しくなるんでしょ?
あ、いや狙ってる訳じゃないよ!?
そんな技術わたしに無いし!
でも、声は出さない方がいい、っていうのは知ってた
だから、我慢だここは
我慢だ私!はち!がんばれ!(?)
そう考えている間にも、唇は止まらない
耳を伝って、首に行って──
いつのまにか、私は力を失っていた
『っ・・・ぅっ・・・ん・・・』
うわ、やだ何この声
私じゃない
こんなの、私じゃないぃぃ!!
『せ、先輩!』
【虹村】
「・・・わーったよ」