第28章 青の心
中学二年生の俺には、気になっている人がいる。
ま、察しついてると思うけど。
───はち。
胸はそこそこだし、あんま優しくもねーけど、でも、そこじゃなかった。
俺が好きになったのは、そこなんかじゃなかった。
【黄瀬】
「はちっちー!
この前の花火大会たのしかったッスね~」
『うん、そうだね~』
呑気に語尾を伸ばしてふざけ合っている2つ分の声に、殺気が降り注ぐ。
・・・主に黄瀬。
【赤司】
「・・・・どういうことだ?はち、黄瀬」
『赤司くん!
この前の夏休みにね、花火見に行ったんだよ』
【赤司】
「そうか。
・・・・・・・・黄瀬。」
うわっ怖っ
はちには満面の笑みだった赤司が、黄瀬を見た途端冷たい目になってる
こぇーよお前
黄瀬も犬みてーにションボリしてるし
そんなんだからお前ワンコって言われんだよ。
あとハウス。
・・・まぁ、俺もちょい気になるけど。
その話。
・・・はちに聞けばいいか。
・
・
・
「───はちー」
『お、あーおみねー』
「ん」
手を差し出す。
すると、はちはその手の上に自分の手を重ねた。
・・・ドリンク欲しいだけなんだけどな
・・・──でも、あれだ・・・
クート? カート? キュート?
なんだっけな
まぁ、それだ。
つまり可愛かった。
「・・・・・・・・ドリンク」
『・・・ああ! なるほど!
ごめんごめん、待っててー』
素直じゃねえ俺の素っ気ない言葉にも、はちは照れまくって笑顔になった。
・・・クートだな
なんで好きになったか。
どこを好きになったか。
いつ、好きになったか。
わからねぇことばっか。
バスケバカな俺には、ちょいと早い感情だったかもな。
何をすればいいのかも分からねぇし、何を言えばいいのかも分からねぇ。
大急ぎで、粉と水を混ぜ合わせているはちのその背中を、目に焼き付けた。
ちいせぇ体も、頼もしく見える。
ポニテにしてる髪も、よく似合ってる。
・・・赤司と同類だなコイツ。
完璧すぎてなんも言えねー