第23章 虹の心
「──っは!? おまっ、ちょっ」
『う、わぁぁあ!?』
軽く押しただけの筈なのに、高速スピンを披露したはち。
・・・いや、今それ必要ねぇんだよ
どうやら靴下とフローリングで滑りやすくなっていたらしい。
そのまま、目をグルグルにして床に崩れ落ちる。
「・・・・・・・はぁ。」
仕方ないから俺も床に座り込む。
そして。
目を閉じて視界の回転に堪えているはちの上に覆い被さった。
『う、へぇ・・・・・・先輩が3人いるわ・・・』
「俺が3人もいたら逆ハー完成だな」
冗談言ってんじゃないですよ、
なんて笑うこいつに、やっぱり好きなんだと自覚する。
ゆっくりと、はちの口許を指でなぞる。
反応しやがって、なんか俺も変な気分になっちまった。
「・・・するぞ」
『バッチ来いです』
「・・・お前は必ず雰囲気壊すな」
『そういう宿命なんです』
無駄口叩くのをやめ、はちの口に自分のを重ねた。
それっきり。
『大人のキス』なんてもんはしない。
夜だしな。疲れてるしな。汗かいてるしな。
「・・・なんつー顔してんだよ」
『だって、一回しかしなかったじゃないっすか』
・・・おまえがそんなこと言うから。
俺はまた、唇を重ねた。
これからもっと、どうしようなく好きな気持ちを募らせていくんだろうな
めんどくせぇことに変わりはないが、悪くはないかもしれない。