第23章 虹の心
「・・・やっぱ、家帰ってからにしよーぜ」
『あ、はい』
こいつのキスしてるときの顔、外には見せたくねぇしな
家帰ってからでも充分だろ
『ただいまー』
「おー・・・」
家に着いた途端、駆け出すはち。
ものすごいスピードでリビングに直行している。
靴を脱いで、まずは部屋に荷物を置きに行く。
今日悠真と夢は、ばあちゃん家だ。
早いもんで夏休みだからか、ここしばらく泊まりに行っている。
だからか、室内は静かだ。
「おい、はち・・・」
『!!』
電光石火の如く、はちはリビングを飛び出した。
真横をものすごいスピードで駆け抜けられる。
・・・・・・・・は?
いやいや、鬼ごっこじゃあるまいし
大方、荷物を置きに行ったんだろう
俺はまた自分の部屋へと引き返した。
「お前・・・」
『っ!!?』
体を跳ねらせて、はちはまたものすごいスピードで駆け抜けた。
それはもう、青峰なんか比じゃねぇくれぇだ
・・・って、そうじゃなくて!
なんで逃げてんだよアイツ!?
「はちーーー!! おまっ、なんで逃げんだよ!?」
『逃げてないですー!』
「逃げてんじゃねぇか!」
『先輩が追いかけて来るからですー!』
ん?そういうことか?
「追いかけねぇからこっち来い」
『・・・・・・・・やだ。』
・・・・・・・・・はぁぁぁあ?
ふざけんなよ?
怒るぞおい
「なんでだよ。」
『・・・なんていうか、その・・・よく考えたら恥ずかしい、というか・・・』
「・・・え?」
よく聞き取れねぇが、あいつの真っ赤な耳を見て、体が勝手に動いていた。
『・・・──っ! うぎゃっ!』
「・・・もう少し色気ある声出せねぇのかよ」
『いきなりに色気求めないでよ』
そう。
はちの背中を、包み込んだ。
あんなに頼もしい背中でも、包めばなんてことなくて。
華奢な女子そのものだった。
「・・・細くね?」
『嬉しいこと言ってくれますね』
「褒めてねぇよ」
『えー・・・って、あ・・・』
はちの肩を軽く押して、こっちを向かせた。