第17章 多くの天敵
『あ、れ・・・。
・・・もう、消えるの?』
一炊の夢のよう。
私は、あの世界に戻ったら・・・
トラックに轢かれて死ぬのだろうか。
・・・痛そうだな
【虹村】
「───はち」
『!! 虹村先輩・・・』
正直、今は会いたくなかった。
消える瞬間なんて、見られたくなかった。
どんなときでも、神様は残酷なんだね
【虹村】
「・・・お前、また・・・消えるのか」
『・・・はい』
・・・・・・ん? 『また』?
『またって・・・どういうことですか?』
【虹村】
「──やっぱり、覚えてなかったか」
ふぅーっと息をつくと、虹村先輩は人間一人分の間を空けて立つ。
【虹村】
「・・・いや、思い出さない方がいい」
『え・・・』
何のことだか分からない。
どうすればいいの・・・?
【虹村】
「──俺が会いたくなったら、必ず会いに行く。
お前が会いたくなっても、俺が必ず会いに行く」
『────!!』
どこかで聞いたことのあるようなフレーズ。
その瞬間、何かが頭の中を駆け巡った。
意識が遠退く。
やだ、やだ・・・!
まだ、離れたくない・・・
【虹村】
「・・・大丈夫だ。」
『先輩、先輩・・・!』
人間一人分の隙間なんか飛び越して、先輩に抱きつく。
背中に手を回して、力を込めた。
虹村先輩も抱き締め返してくれて。
その体温だけを忘れないように、
ぐっと、目をつむった。